KDC NEWS 2016.11 12 臨時版 ②

院長雑感

この地に移転開業をして、来年の5月ではや4年になろうとしています。以前は咬合治療(かみ合わせ治療)を中心に日本全国から、治療に来られる方もたくさんいました。そんな中、やはり一部の方だけが受けられる治療では真の医療とは言えないという思いが募り、妻の郷里がある京都へ移転してきました。

まず最初に驚いたことは率直にいって大変ひどい患者さんが多いということ。以前は歯を抜くことは1年に数本で、悲しくも歯を失われた方で入れ歯の方の場合は1年に2~3個を作る程度でした。

しかし、現実にはこの地で診さして頂いている患者さんの多くは全くそれとは異なった診るも無残な口腔内の状態でした。そして、こうなってしまったのは自分が歯の手入れを怠った性だと思ってあきらめている方や、ご自身の受けている治療の内容さえ、理解されずに治療をお受けになっていたりする皆さんがとても多いことに気付きました。

また、間違った歯科治療に対するイメージ、例えば歯科治療は痛いもの、怖くて緊張して受診するのをためらっていたり、年を取るとみんな歯が抜けて入れ歯になるもの、砂糖は虫歯の原因だなど、おおよそ今現在の近代歯科医学とかけ離れたような常識がまかり通っています。

これらはすべて、皆さんがただ単に正しい歯科医療に対する知識がないために起こった誤解から発生していることです。皆さん自身が問題ではありません。

要は我々歯科医療に携わる側にも多くの反省すべき点があると僕自身常に反省しています。

例えて言えば、患者さんは何も知らない生まれたての赤ちゃんとしましょう。当然、それを元気で正しい方向性へ導いていく役割は親の責務です。この部分の役割を担っているのが、我々医療人の本当の役割だと僕は考えています。ですので、やはり、まずはなによりも、虫歯や歯周病の治療を痛くなったら、治療をするのではなく、痛くなる前に今の現状がどうなっているのか、そして、今後起こりうるリスクに対して、未然に、それも必要最小限の処置で防ぎ、お口の健康を通じて、より豊かな健康観をもって、生き生きと人生を謳歌してもらいと思います。

歯は他の臓器と違い、一度抜いてしまうと元にはもどることはありません。ですので、一生涯ご自身の歯でおいしくものを食べていくように僕たちもがんばりたいと思います。

ところで、まったく話が変わりますが、ぼくが、歯科医師になりたての頃、ある乳癌の末期の患者さんの治療を担当したことがありました。その頃、新米でしたので詰め物の処置を行ったのですが、すごく時間がかかったにもかかわらず、患者さんが笑顔で感謝の言葉をおっしゃって頂き、その日帰りました。

翌日、ご家族の方からその患者さんが亡くなったとの知らせを受け自宅にお伺いしたところ、この患者さんは死ぬまで、歯を大切しされており、実は昨日は死に化粧のために無理を押して治療に来られていたことを知りました。この患者さんは死の直前まで、歯ブラシを病室において手入れをしていたそうです。
それを聞いて思ったことは、僕たち歯科医は病気を治しているだけでなく、同時にその患者さんの人生にも深くかかわっていうのを痛感しました。

現在でも、その患者さんのことははっきりと覚えています。ですので、僕は歯科医として技術的なことは、当然日々研鑽し、最良の治療を提供していくことは、もちろんですが、この向日町に来て、心から真心で患者に接し、
できるだけため多くの患者と人間として接して行き、そして、地域の方々に少しでもお役に立てればと思います。

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